Thursday, January 17, 2008

春遠からじ

もうなんだか笑ってしまうくらい寒いのでホントにちょっと笑ってしまった。
パキンと寒い日はいつまで続くのだろう。
こんな時はチェーンに油をきらさないようにこまめな注油を忘れずに!

以前、私は極北の街に住んだことがあるので
とりあえずマイナス20度くらいまでは経験済みだけれど
とは言え、しばらく本格的な寒さから遠ざかってしまっている身には
この空っ風はけっこうきびしい。
でも、まあ一月なんだしこのぐらい寒くないとなあ~
寒さにホッとする瞬間もあるわけで、そう『冬来たりなば春遠からじ』
これはシェリーのかの有名な「Ode to the West Wind」の締めくくりの一節だけど原文は「Oh Wind, If Winter comes, can Spring be far behind?」
陳腐な翻訳が多いなかにあって訳文のほうがそれっぽく聞こえる珍しい例だと思う。昔「アイ・ラヴ・ユー」を「死んでもいい」と訳した二葉亭四迷のように。


春遠からじで思い出す一日がある。

その昔分析哲学史のクラスをとっていたときのこと。
Hi(=ハイ。彼はミドルネームが何故か“Hydrogen”なのでこのニックネームがついた)が、「今日は外で授業をやるべきだ!」と提案。そう、暖かくなってくるとその大学ではLawn(芝生)やAmphitheater(古代ギリシャ風の野外劇場)に出て授業をするクラスも結構あった。

Jon(=ジョン。教授だけど若いのでファーストネームで呼ばれていた)は、あまり乗り気ではなかったようだけど、もっと暖かくなってから(たとえば4月とか)外で授業をすると、歩いている薄着の女性に(もちろん生徒がだけど)気を取られて授業が全然進まないから、どうせ屋外授業なら2月の今日の方がいい、とのこと。結局、民主主義的に多数決をとったら誰も反対しなかったので外に出ることになった。

Amphitheaterの客席の周りのコンクリのスペースにクラス12人で輪になって授業開始。Jonは若い頃にやってたレスリングのせいで30代を前にして膝がかなり来ちゃってるらしく座るのが大変そうだったし、私の座った位置からは傾き始めた陽射しがまぶしく、隣に座ったEmilyはサングラスをかけるとその後はほとんどノートを取らなかった。そんな勢いで良いの?エミリー!なんて思いながら、すぐそこまで迫った春を予感させる穏やかで心地よいそよ風に吹かれて哲学を考えた。
 
「ベンジャミン・フランクリンはフランスに住んだことがある。」という文と
「アメリカの最初のフランス大使(もちろんベンジャミン・フランクリン)はフランスに住んだことがある。」と言う文とは果たして同じ「意味」か?

とか

Peterは緑色のシャツを着ていたんだけど、では「Peterは緑色のシャツを着ている」という文は必然的に真か、とかとか。つまりまぁ、de reとde dictoの違いなんだけど…

途中から風が少し強くはなったけど、屋外の授業もたまには良いいもので今でもあの時の風の匂いを覚えている。少人数で、黒板を使わないクラスじゃないと無理だから、他にはM&M(形而上学と道徳)くらいしかなかったけど(笑)

ところでタイトルの「春遠からじ」。
久しぶりに全部読んでみたけ、どこの文よりもずっとカッコいいフレーズが実は最後の二連にたくさんある。

If I were a dead leaf thou mightest bear;
If I were a swift cloud to fly with thee;
A wave to pant beneath thy power, and share
The impulse of thy strength, only less free
Than thou, O uncontrollable!―if even
I were as in my boyhood, and could be
The comrade of thy wanderings over heaven,
As then, when to outstrip thy skiey speed
Scarce seem'd a vision,―I would ne'er have striven
As thus with thee in prayer in my sore need.
O lift me as a wave, a leaf, a cloud!
I fall upon the thorns of life! I bleed!
A heavy weight of hours has chain'd and bow'd
One too like thee―tameless, and swift, and proud.

Make me thy lyre, ev'n as the forest is:
What if my leaves are falling like its own!
The tumult of thy mighty harmonies
Will take from both a deep autumnal tone,
Sweet though in sadness. Be thou, Spirit fierce,
My spirit! be thou me, impetuous one!
Drive my dead thoughts over the universe,
Like wither'd leaves, to quicken a new birth;
And, by the incantation of this verse,
Scatter, as from an unextinguish'd hearth
Ashes and sparks, my words among mankind!
Be through my lips to unawaken'd earth
The trumpet of a prophecy! O Wind,
If Winter comes, can Spring be far behind?


興味のある方全文はこちらからどうぞ。
たとえ西の風が強く吹いたとしても、
分析哲学の歴史はイェナのフレーゲからケンブリッジのラッセルへ、そしてやがてハーバードのクワインへと、西へ西へ、風に逆らって進んでいくのでした。

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